秋葉原通り魔事件から10年 加藤智大の承認欲求は少年Aと違う?

包丁をかざす男のシルエット 犯罪・犯罪者

2008年6月8日に加藤智大(当時25歳、現在死刑囚)の起こした秋葉原通り魔事件から10年の月日が経ちました。

この度、関連書籍を読んでみたので改めて思ったことを書こうと思います。

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秋葉原事件の概要

秋葉原事件は当時25歳で派遣社員だった加藤智大(かとうともひろ)が、秋葉原の交差点にトラックで突っ込んだ後、持っていたダガーナイフで無差別にそこにいた人達を切りつけた事件です。

トラックではねられ3人が死亡、2人が負傷、ナイフにより4人が死亡、8人に重軽傷を負わせた後、駈けつけた警察官に取り押さえられました。

事件に至った動機

加藤死刑囚が事件を起こすに至った直接的な動機は、仕事とプライベート、その両方に自分の居場所を失ったことにあります。

職場での扱いに不満を覚える

派遣社員という不安定な立場で雇用され、一度は派遣切り要員になったものの、それが延期となり、自分が物のように扱われていると感じていました。

ある日出社すると、自分の作業服(ツナギ)が見つからず、加藤は腹を立て、職場から無断で家に帰ってしまいます。

彼は嫌がらせだと思ったようですが、すぐに作業服は発見され、会社の人がわざわざ加藤のアパートに勘違いだったことを伝えに来ています。

しかし、この出来事を最後に加藤が出社することはありませんでした。

この「ツナギ」の真相は分かっていません。
加藤からすれば、自分はいつもの場所を確認し、そこにはなかった、ということになります。

誰かが嫌がらせをしたのか、または軽いからかいの気持ちで隠し、加藤が帰ってしまったため、慌てて連絡した可能性もありますし、本当に加藤の勘違いで何かを見落としていたのかもしれません。

心の拠り所だった掲示板が荒らされる

携帯電話

加藤は携帯の掲示板に書き込みをすることが大きな楽しみでした。

2チャンネル(現在の5チャンネル)のような巨大な掲示板では誰が誰だか分かりませんが、携帯の掲示板は参加人数が少なく自分のキャラを確立させることで人に認めてもらえる喜びがありました。

彼はそこで知り合った人に実際に会いに行ったりもしています。

しかし、彼がそこで作っていたキャラはスレッドをむやみに立ち上げるという迷惑なものでした。

それを面白がってくれる人もいましたが、当然反発もあり、「なりすまし」や「荒らし」などが現れ、加藤が書きこんでも本人かどうかも分からず、スレッドが過疎化してしまいます。

唯一自分を認めてくれる人や、本音で話せる場所も失い、彼はなかばヤケクソの状態にあったといえるでしょう。

そして「なりすまし」に痛みを与えるために事件を起こすことを思いつきます。

加藤智大の生い立ちは問題だらけ

とにかく母親から躾(しつけ)と称された虐待ともいえる仕打ちで、加藤の心は大きく傷つきながら人格形成が行われています。

加藤の最も古い記憶は、3歳の頃に母親にトイレに閉じ込められた、というものでした。理由は憶えていません。

さらに、

「2階の窓から落とされそうになった」
「雪の日に薄着で家から閉め出された」
「風呂で九九の暗誦をさせられ、間違えるとお湯に沈められた」
「泣くと屋根裏部屋に閉じ込められたり、口にタオルを詰められガムテームを張られた」
「食事の途中で、遅い、という理由でチラシの上に食べ物をぶちまけそれを食べさせられた」
「おねしょをすると激怒され赤ちゃん用のオムツをはかされた」
「友人を家に呼ぶのは禁止」
「テレビは『ドラえもん』と『日本昔話』しか見てはいけない」

など、躾と呼ぶにはあまりにもひどいものでした。

また、夏休みの宿題などで作文や絵を描く際には母親が介入し、自分の気に入るように徹底的にやり直しをさせられました。

これにより良い点数をもらっても、加藤自身は何の達成感も味わえず、自分の主体性を奪われたと感じていました。

加藤智大の性格

中学の卒業アルバムには自分の弱点を「過去を問われること」と書き、人格を「心が曲がっている」となぜか英語で書いています。

英語で書くことによって自分の内面をストレートに人に見せたくないという思いと、自分の能力を示す自己顕示欲の両方を満たしていたようです。

短絡的でキレやすい

小学校の頃から成績は良かったものの、性格はキレやすく、突然怒り出し、暴力を振るうこともありました。

彼の中では怒る理由があるのですが、それを言葉にする前に手が出てしまったり、行動で表現しようとする傾向がありました。

これは母親から受けた躾によるものです。
母は加藤の態度にすぐ怒り、言葉で諭すことをせず、時には暴力的な罰を与えてきました。

例えば、食事が遅いと、「早く食べなさい」とは言わず、いきなりチラシの上に食べ物をぶちまけ、それでも遅いと口に食べ物を突っ込んで無理やり食べさせるという具合です。

これでは加藤が短絡的でキレやすい性格になるのは当然ともいえます。

言葉で説明せずいきなり暴力的行動に出る加藤の性格は、母親から受けた躾そのものです。

孤独を極端に怖れる

加藤にはオタクの一面もありますが、私のような引きこもり体質とは真逆で誰かと繋がっていない状態を極端に怖れています。

一人でゲームをしていても、それは誰かに攻略法を教える為だったり、話題作りの為にしていたようです。

また車の運転が最大の趣味でしたが、一人で乗っていてもヒッチハイクの若者を乗せてあげたり、バスを待ってる高校生を駅に送るなど人間関係に貪欲です。

掲示板以外に出会い系サイトにはまったりもしています。

たとえ今繋がりがなくても将来的に繋がりが持てると思えることが加藤には重要なことでした。

例えば、掲示板の知り合いが半年先の誕生日にやってくるという場合でも、それを楽しみに半年間頑張れたりします。

加藤智大の母親はどんな人?

加藤の母親は高校卒業後、大学受験に失敗し、地元の金融機関に就職。
そこで知り合った3歳年下の男性(加藤の父親)と結婚し、専業主婦となります。

後に加藤はこう語っています。

「母も含めて私の家族全員に言えるのは、叱ったり、怒ったりするときに、その理由を説明しないことです。」

母親自身は裁判の公判で、以下のように説明しています。

「引っ越してからは、夫が毎日のように酒を飲んで帰るのが遅く、暴れたり、帰宅しないこともあり、私はイライラし、子供たちに八つ当たりすることがたびたびありました」

母親のみならず父親の責任も大きいといえるでしょう。
尚、事件前にこの夫婦は離婚しています。

母親の行き過ぎた教育は自分が大学に入れなかったというコンプレクスも大きく関係しているようです。

さらに母親は弟よりも加藤に厳しく接し、加藤は私だけが母親の目の敵にされているような感じがしましたとも語っています。

母親を殴る

パンチ

中学2年にのとき、母親に叱られ無視していると、頬をつねったり髪をつかんで揺さぶられたりしたため、加藤はキレ、母の顔面を思い切り殴っています。

メガネが割れたため、目は大丈夫か?と加藤は声をかけたそうですが、母は口汚い言葉で罵り泣いたとのことです。

母親への暴力はこの1回だけですが、この記述を読むと私などは「よくやった」と加藤へ肩入れしていまします。

加藤智大の学歴

母親の意向でもあった名門・青森高校に進学した加藤ですが、本当は工業高校か地元の私立高校へ通いたいと思っていました。

車が好きだったことが工業高校へ行きたかった理由のようです。

この頃母親と、大学に入ったら自動車を買ってもらうという約束をしています。

しかし母親のために勉強していたと自身が感じていたように、勉強そのものは好きではありませんでした。

母親の期待に応えて高校に入ったことでやる気を失い、成績はビリから2番目。
学校が終わると中学時代からの友人の家に集まり、ゲームなどをする毎日でした。

高校を卒業すると親元を離れ、自動車工学科のある短期大学へ入学します。
そこで自動車整備士の資格を取るつもりでしたが、彼の奨学金が父親に振り込まれ、そのお金を渡してくれなかったため、父へのアピールとして整備士の資格を取ることをやめてしまいます。

社会人になる

卒業後は仙台に移り、警備会社に入社。
欲しかった自動車を買います。
しかし自動車にお金をかけるあまり経済的に苦しくなり、消費者金融に手を出してしまいます。

生活が苦しくなるにつれて職場でキレることも多くなり、ある日工事現場で交通誘導を行っていたとき、自分の指示に従わなかったダンプカーにキレ、無断で帰宅。

その後ほとんど出社せず会社を退社、車は友人に売却しています。

次に埼玉県に移り住み派遣で自動車関連の仕事に就きます。
そこでまた車を購入。
ローンを組んだものの消費者金融の返済も続いており、生活に余裕はありませんでした。

そこでは1年間働きましたが、正社員に意見した際「派遣のくせに、黙ってろ」と言われたことをきっかけに退社してしまいます。

次に茨城県の住宅関連部品を製造する会社へ派遣で入ります。

自殺未遂

この頃加藤は、携帯の掲示板にのめり込んでいました。
しかし、あるとき本音で厳しいことを書いたところ、仲間との関係が悪化し、掲示板に居づらくなってしまいます。

その孤独感から自殺を考えるようになり、故郷の青森で対向車線のトラックに正面衝突し、死ぬことを計画します。

酒を飲んで計画を実行しようとしましたが、車を縁石にぶつけてしまい、車が壊れ動かなくなってしまいます。

これで自殺への思いがトーンダウンし、お金も使い切っていた加藤は3年ぶりに実家に戻ります。

母親からの謝罪

帰ってきた加藤を母親は初めて抱きしめ謝罪します。
母は数年前から自分の行き過ぎた教育について反省していたようです。

加藤だけでなく、次男も高校を中退し家に引きこもっていたことも要因です。
弟には加藤が帰る1年前にすでに謝罪し許しを得ています。

車の修理代やレッカー代も母親が支払ってくれました。

その後大型免許を取得し地元の運送会社に就職します。

加藤智大と元少年A(酒鬼薔薇聖斗)との違い

加藤と神戸連続児童殺傷事件を起こした元少年Aは同い年です。

加藤が事件を起こす10年前にすでに元少年Aは事件を起こしているので単純に比較はできませんが、二人には大きな違いがあります。

それは元少年Aには多分にサイコパス傾向がみられますが、加藤にはそういった傾向が無いということです。

元少年Aには殺人願望があり、動物を殺すことで性的快感を覚えるという特異な面がありました。

元少年Aのそのような残虐性がどこで芽吹いたのかは関連書籍を読んでも分かりません。

しかし、加藤のキレやすい性格は母親の仕育て方によるものだということは心理学者でなくとも分かります。

サイコパスには悲しみや同情心などの感情が欠けていますが、加藤には人間味があります。

例えば、加藤は運送会社の先輩に酒の席で軽口をたたき、説教されたことがあります。
そのとき、先輩は熱く自分の境遇や苦労を包み隠さず語り、それを聞いた加藤はしゃくり上げて号泣しています。

それ以来その先輩を兄のように慕い、先輩の子供にも優しく接しています。
このようなことはサイコパスではあり得ません。

私は元少年Aが突然出版した本は読んでいませんが、レビューなどをみると、強い自己顕示欲が丸出しで反省の色は見られないとのことです。

二人とも強い承認欲求が事件を犯す原動力になっていることは共通していますが、加藤の場合、人生がうまく行っていないことが大きな原因です。

それに比べると元少年Aは自分の欲望を満たすことと、能力を示したいという野望のようなものが原因のように感じられます。

なぜ無差別殺人事件を起こしてしまったのか

秋葉原事件

Original update by Carpkazu

私は秋葉原事件について今まで断片的にしか知りませんでした。
これまでは、なぜ無差別に人を殺したのかが疑問でした。

というのも、母親からひどい仕打ちを受けていたのだから、殺すのなら母親だろう、と思っていたからです。

今回本を読んで、母親が反省し謝罪していたということを初めて知りました。
これで怒りの矛先が母親ではなかったことは納得できます。

人生がうまくいかなかった原因は確かに母親にありますが、その母は反省し謝罪しているとなれば、怒りを向ける矛先は別の所に向かっても不思議ではありません。

加藤自身が書いた「解」を読むと、直接的な動機は自分が事件を起こすことで掲示板の「なりすまし」に痛みを与えるということが目的です。

自分のこの思考回路そのものを恨むのなら、母親に怒りが向くと思いますが、この時点では母親からコピーした思考方法で怒りを「なりすまし」に向けています。

加藤智大の弟の苦悩と自殺

加藤の弟は兄・智大が死刑になる前に、自ら命を絶っています。

兄弟関係

兄弟は小学6年性までは仲がよかったそうですが、中学に入ると仲が悪くなり口をきくこともなくなりました。

弟は仲が悪くなるまでの期間を「ハッピーな時期」ととらえていましたが、兄にはそんな時期はなかったようです。

母親は自らも述べているように、弟よりも兄に対してきつく当たってきました。

兄が弟に対して良くない感情を持っていたとしても納得できます。

事件後も弟の面会は拒否し、著書にも弟のことについては全く触れていません。
兄である加藤にとっては、自分と同じ境遇にいながら自分より恵まれた立場だった弟は、もはや理解し合えない存在だったのかもしれません。

事件後の弟

弟は兄が事件を起こした直後に会社を退職し、その3ヶ月後にアパートを引き払い、素性がバレないようにアルバイトを始めます。

しかし引っ越してもマスコミに嗅ぎつけられ職と住居を転々とする生活を送ります。

そんな生活の中でも彼女ができ、一時は幸せを掴みかけましたが、結婚の話が出た途端相手の親に猛反対されてしまいます。

やがて彼女との交際は破綻し唯一の希望だった彼女を失った弟は絶望の淵に追い込まれます。

手記にはこう書いています。

兄は自分をコピーだと言う。その原本は母親である。その法則に従うと、弟もまたコピーとなる。兄がコピー1号なら、自分は2号だ。

そして、兄と同じように母から、

〈小学校時代から友人を家に呼ぶことは禁じられていた〉

〈テレビで見られるのは『ドラえもん』と『まんが日本昔ばなし』だけ〉

〈作文や読書感想文は母親が検閲して教師受けする内容を無理やり書かされた〉

このような教育を受けています。

母親の教育方針はおかしいと感じてはいたものの、兄ほどは恨んでいない、という微妙な立場です。

自殺未遂後に本当に自殺

弟は週間現代の記者に自殺未遂したことを明かしています。

そのとき選んだ方法は「餓死」でした。

加害者は苦しまなければいけない、楽に死んではいけないと思ったそうです。
結局10日目で水を飲んでしまい、このときは未遂に終わっています。

その後本当に自殺してしまうのですが、その方法は明らかにされていません。

「秋葉原連続通り魔事件」そして犯人(加藤智大)の弟は自殺した

加藤智大という人間について思うこと

まず本を読んで感じたのは、彼が異常に孤立や孤独を怖れる性格であるということです。

誰かとつながっていると感じることが加藤にとっての生きる意味だったようです。

もし彼女がいれば24時間365日一緒に居たいというほど、誰かと強い結びつきを求めています。

実際に彼女がいた時期もありますが、やはりこの性格では長続きしません。

掲示板では自分を不細工キャラとして振舞っていますが、そこは冷静に分析し、不細工といっても自分は35点くらいの不細工なのでそこまでひどいものではないと思っています。

そしてそのキャラで掲示板に書き込みすることを楽しみにしていました。

職場などの人間関係がある程度ある状態のときは掲示板への依存度は低かったのですが、最後はもう掲示板しかないと自分で自分を追い詰め、居場所を奪った「なりすまし」への攻撃として事件を起こしてしまいます。

加藤自身著書の中で反省していますが、逃げ場として他の掲示板やSNS等複数の場所を作っておけばよかったものを、「なりすまし」に対する固執から他のことが考えられなくなっています。

この犯罪を防ぐとすれば、小学生や中学生時代に暴力行動を起こした時点で、徹底的な心理ケアをする必要があったように思いますが、今の教育体制で一人の人間にそこまで深く関われるのかは疑問です。

本を読む限りでは、もし死刑判決が覆れば十分人生をやり直せる可能性はあると思いますが、実際に7人もの命が奪われていることを考えるとやはり難しいのかもしれません。