記憶の種類とトラウマ克服 記憶を消す薬「記憶消去剤」とは!?

脳とジグソーパズルのピース 潜在意識・無意識

今回は記憶の種類やそれぞれの役割、人間がどのように記憶を処理していくかということや、トラウマ、記憶の消去などについて考えてみたいと思います。

記憶は、感覚記憶短期記憶長期記憶と大きく3つに分けることができます。

まず、感覚記憶は辞書にこう書かれています。

外部からの刺激の視覚的・音響的・音声的特徴を抽出して、最大一、二秒程度のごく短時間保持される意識されない記憶。注意を当てることで短期記憶に移行する。

コトバンクより

短期記憶は数十秒~数分間保持される記憶であり、長期記憶はそれ以上の長さの記憶です。

以上から、記憶は感覚記憶⇒短期記憶⇒長期記憶という段階で保存されることが分かります。

短期記憶は脳の側頭葉の海馬で処理・保存され、長期記憶は大脳皮質へ送られて保存されます。

トラウマや恐怖症・神経症を考える上では特に長期記憶が重要になります。

ここでは、教科書としてピーター・A・ラヴィーン博士の著書「トラウマと記憶」を用い、長期記憶について見ていきます。

長期記憶を大きく分けると、顕在記憶潜在記憶の二種類があります。

この二つの記憶システムは異なる機能を持ち、独自の神経解剖学的な脳構造を介します。

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顕在記憶とは

顕在記憶は意識できる記憶です。

顕在記憶は宣言的記憶エピソード記憶に分けることができます。

宣言的記憶

とても客観的な記憶で、事実の羅列ということができます。

コンピューターに例えると、宣言的記憶は大脳皮質をハードウェア・OSとして利用し、秩序があり整理された記憶です。

ここには思いや感情は含まれていません。

エピソード記憶

宣言的記憶を「冷たい」記憶だとすると、エピソード記憶は「温かく質感のある」記憶ということができます。

ここには感情が含まれ、顕在意識の宣言的記憶と潜在記憶の間の架け橋のような役割もあります。

自分に起こった出来事を物語のように語るために不可欠なものです。

感情が含まれるため、宣言的記憶よりも曖昧になる傾向があります。

潜在記憶とは

潜在記憶は意図的に思い出すことはできません。

感覚、感情および行動の寄せ集めとして湧き上がってきます。

潜在記憶には、情動記憶手続き記憶がありますが、これらははっきり分かれているものではなく、混じり合っています。

情動記憶

感情は哺乳類すべてが共通して持つ本能です。

哺乳類の感情は一般的には驚き、恐れ、怒り、嫌悪、悲しみ、喜びがあり、博士はこれに加えて、好奇心、興奮、嬉しさ、勝利感があるとしています。

情動記憶の役割は、後に即座に、かつ有効的に活用できるよう重要な経験に印をつけておくようなものです。

運動記憶という本があるとしたら、情動記憶は特定の手続き記憶を選択するための「しおり」のようなものと考えることもできます。

情動記憶は現在の状況で同じような種類と強さを持った感情が知覚されると蘇ってきます。

手続き記憶

手続き記憶は衝動、動き、及び体内感覚です。

手続き記憶には大きく分けて三種類あります。

一つ目は、学習された運動活動です。

ダンス、スキー、バイクの運転など練習により絶えずこの記憶は修正されていきます。

二つ目は、生まれつき備わった緊急時の反応です。

危険を感じた時に体を硬くしたり、身を縮める、後退、逃走、闘争、凍りつきなどがあります。

三つ目は、接近または回避、引き寄せまたは反発という、有機体に備わった反応で、アメーバでも持っているものです。

栄養があり成長に役立つものには接近し、ケガの原因や毒になりそうなものは物理的に回避しようとします。

人であれば、近しい人のそばに寄ろうとし、自分にとって害になりそうな人は避けるということです。

記憶システム間の相互関係

顕在記憶は分かりやすいですが、潜在記憶は意識できない記憶のためちょっと分かりづらいかもしれません。

潜在記憶は無意識的に浮かび上がってくるような記憶です。

感情により喚起される情動記憶は、その時に感じた感情の記憶であり、身体感覚として体験されます。

例えば、「怒り」の身体感覚としては、頭がカーっとするような感覚だったり、「落ち込み」は体が冷えて力が抜けてしまったような感覚だったりします。

手続き記憶は練習して体得していくような体の記憶です。
上記の例のように楽器の演奏や車の運転などがこれに当てはまります。

各記憶の相互関係は下図のようになっており、手続き記憶は最も深い所にある記憶です。

記憶システム間の相互関係の図

トラウマと潜在記憶

自転車に乗るという行為は手続き記憶により行われるものです。

もし、自転車に乗る練習をしているときに、ひどい転び方をして大怪我をしたとします。

この体験と結びついた恐怖を伴った情動記憶により、自転車にまたがると体が固まったり縮こまるという手続き記憶の緊急時の反応が現れてしまい、自転車に乗ることが難しくなってしまう可能性があります。

これがトラウマと呼ばれるものです。

ただし、トラウマの記憶に関する見解は病理学的にも治療においても統一されていないとのことです。

同様に潜在記憶についても、はっきりこれが情動記憶でこれが手続き記憶と分けられないので、概念としてこんな感じと覚えておけばよいと思います。

ピーター・ラヴィーン博士のトラウマ解消法

ピーター・ラヴィーン博士はソマティック・エクスペリエンシング(SE)という身体心理学を使ったトラウマ解消法を考案しています。

この手法を使った実例として、難産の後遺症というトラウマに苦しんでいた生後1年2ヶ月のジャックの治療を紹介したいと思います。

赤ん坊のジャック

ジャックは逆子でへその緒が首に3重に巻きついている状態で産まれようとしていました。

頭は子宮底に挟まり、足で蹴る度に喉がしまり窒息の恐怖を味わったと思われます。

緊急の帝王切開が行われ、強い吸引や複数の注射などの処置により、ジャックの命は無事でした。

しかしその後、断続的な胃逆流があり、博士のもとを訪れた2週間後には内視鏡検査が予定されていました。

母親のスーザンはその治療がまたさらにトラウマになる可能性を考え、博士のセッションを受けてみることにしたのです。

ジャックとのセッション

母親に抱かれ部屋に入ったジャックは、並んで置かれているおもちゃや楽器、人形に興味を示します。

博士がホピ族のひょうたん製ガラガラを振ってみせると、ジャックは恐る恐る手を伸ばします。

しかし博士がガラガラを渡そうとすると手を引っ込めてしまいます。再度手を伸ばしますが、ガラガラに手が触れるとそれを押しやり、不満気にわずかに泣いて母親のほうを見ました。

博士は1歳のジャックに彼の難産について話します。すると博士の言葉のトーンに安心したような様子を見せ、またガラガラに手を伸ばしテーブルを指さしました。

「リンゴ、リンゴ」と言いながら左腕を伸ばします。
テーブルにはザクロが載った皿が置いてありました。

博士が皿を持ち上げ差し出すと、そのうちの一つに触れてから押し戻しました。

「押すのが好きなんだよね?」と博士は聞きます。

「知らない人たちがみんなで突いたり痛くしたりして、君がどれだけ押しのけたかったかよくわかるよ」

この何気ない赤ん坊の行動が、過去のトラウマに対する反応だったことを博士は見抜いたのです。

自ら生まれ出ることができなかったジャック

その後、スーザンが博士に、小児科医が内視鏡検査を提案しているという話をすると、瞬時に1歳のジャックの顔は歪み下を向いて「ママ」と叫びました。

ジャックに言葉の意味が分かっているのか、母親の不安を感じ取ったのかは分かりませんが、明らかに嫌がったのです。

博士がジャックの背中に手を置くと、突然彼は母親の太ももを足で強く押し、母親の左肩に向けて身体を伸ばしました。

博士はこの動きを見て、誕生時に彼が前進しようとした動きが未完了になっていると判断します。

実際の出産ではいくら足で蹴っても進むほどに首が締り、自ら生まれ出ることはできませんでした。

出産を再体験させる

母親が彼の押し進もうとする力を受け入れ、ジャックを膝に立たせました。

博士がジャックに語りかけると、彼は博士の手を強く押し戻します。

その顔には怒りの表情があり、唸りながら博士を見ます。

博士が彼の手の平に抵抗を与えるように親指を置くと、腕を伸ばし押しやってきます。その間、博士はアイコンタクトを取り、驚きや励まし、高揚感を伝えます。

ジャックが博士の手を押しやるごとに反応に喜びが感じられ、最後に強く押し返すと、ジャックは激しく泣きました。

私は、ジャックが息を背中の胸郭あたりへ吸い込むように促すことの重要性をスーザンに説明した。彼女の手を取り彼の背中に持っていき、その部分を支えながら、彼がその部分へ意識を集中させるように教えた。彼が、その部分を収縮させるパターンが、胃逆流症状の大きな原因となっている可能性があると私は考えた。そして実際にそうだった!

スーザンは息子が激しく泣いたのを見て驚きました。

ジャックはそれまでぐずるだけで、彼の頬に涙が伝うのを見た覚えがなかったと母親のスーザンは語ったのです。

博士は「これは深い情緒的な解放による泣き声だ」と説明します。

この涙は、明らかにストレスが解消されたことを示す涙です。
涙が体を癒すメカニズムは私も身を持って体験し、下記の記事にまとめています。

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記憶は消去できる?

記憶が作られる際には脳内に特別なタンパク質が必要となります。
そして記憶が思い出される際にも同様のタンパク質が作られます。

ラットの実験では、ある音を聞かせた後に電気ショックを与えることで、その音を恐怖の音として認識させます。

そしてタンパク質合成を阻害する化学物質を扁桃体へんとうたいに注射すると、その音を聞かせても恐怖の反応は起こりませんでした。

つまりそのラットは音の恐怖を忘れてしまったのです。

記憶は一旦形成されたらそのまま保たれるわけではなく、思い出す度に再構築される(書き換えられる)とのことです。

従って思い出しているときに新しいタンパク質合成が行わなければ、元の記憶は消滅するということになります。

記憶消去剤が登場する?

このラットの実験の原理を人間に当てはめると、嫌な記憶を消去できる可能性があるということになります。

記憶を消したい人が、頭にその記憶を思い浮かべているときに、タンパク質合成を阻害する「記憶消去剤」を投与されることで、その記憶の再構築が阻害され、記憶が消されてしまうという理屈です。

博士によれば、大手製薬会社はすでに薬の製造を進めていて、近い将来記憶消去剤が市場に現れる可能性は高いとしています。

ただし、記憶が消えても記憶の痕跡のようなものがどこかに残り、副作用として現れる可能性が高いとも述べています。

このような記憶消去をテーマにした映画としてジム・キャリーが主演した「エターナル・サンシャイン」が取り上げられています。

この映画での記憶消去法は頭に怪しい装置を取りつけて行いますが、関係が破綻したカップルが互いに相手の記憶を消去した後、また出会ってしまったらどうなるかという興味深いストーリーになっています。

記憶を消したいと思ったら

何かの拍子に嫌な記憶が蘇ってくるのは潜在記憶によるものだということが分かりました。

私の場合、嫌な記憶を思い出したら「ホ・オポノポノ」のクリーニングである4つの言葉を心の中で唱えます。

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すると、その記憶に対する嫌なイメージが和らぎます。

記憶は思い出すときに書き換わるという理屈を考えると、なぜホ・オポノポノが効果があるのかがよく分かります。

嫌な記憶が蘇ったときに、それを振り払って他のことを考えてしまうと、その記憶はそのまま保持されてしまいますが、一旦思い出して味わいながら4つの言葉でクリーニングすると言葉の力でその記憶の嫌なイメージが払拭ふっしょくされて再格納されることになります。

つまり「嫌な記憶」を単なる「記憶」に変えることができるというわけです。

消したい記憶がある人は是非試してみることをお勧めします。

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